平成23年度受賞

『税の正しい使い方』
沖縄県 沖縄尚学高等学校附属中学校 3年
鶴野 篤熙
 六年程前の或る日、父が突如激しい腹痛に見舞われた事があった。痛みは、次第に強さを増し、油汗が吹き出し始めた。小学生だった僕は、母に救急車を呼ぶようにお願いした。

 ところが、父は、「救急車は、呼ばなくていい。もう少ししたら自分で病院に行くから。」と頑なに拒絶したのだ。あまりの語気の強さに二人とも、何故と疑問を抱きながら顔を見合わせた。一時が過ぎ、痛みに慣れてきたのか、父は自分で車を運転して病院に行った。

 結果は、腎結石で、担当医は、「よく、ここまで我慢しましたね。もう少し遅かったら、大変でしたよ。」とおっしゃったそうだ。

 僕は、後に、父が何故救急車を呼ぶ事をあれ程固辞したのか聞いてみた。すると、父はある話をしてくれた。父が大学在学中、友人が、突然構内で倒れてしまったそうだ。周りにいた人々は、すぐに救急車を呼んだらしい。ところが、一向に救急車は来る気配が無い。その友人は、救急車の到着を待たずして息絶えてしまったのだそうだ。

 何故、救急車が間に合わず、友人の命を救うことができなかったのか。

 父は、後に、その理由を知って愕然としたと言う。

 それは、本当に急を要する状態でないにもかかわらず、自分は、税金を納めているんだから、救急車に乗って病院に行ってもいいじゃないか、或いは当然の権利だと言い張って救急車の出動要請をした人がいたそうだ。不必要な出動で、救える命が救われなかった悔しさを感じた父は、それ以来、決して、救急車に頼る事ができなくなったようだ。

 僕も、その後、ニュースで、そういうタクシー代わりに救急車を利用する人が増加してきているという話を耳にした事がある。

 税金とは、自分や多くの人々が、より快適で、より安全な生活を享受するために、国や地方などに納めるお金のことだと授業で学んだ。つまり、きちんと税金を納めている人は、義務教育や消防、救急といったサービスを受けられる、ということだ。しかしだからといって、納税した分は取り返さなくては、サービスを受ける権利があるのだから何をしたっていい、そのような考え方は間違っていると思う。

 なぜなら、税金は、一個人ではなく、社会生活を営んでいる全ての人々に対して、使われなければいけないからだ。自分以外の人々の生活のためにも、納税を盾にむやみに救急車や警察を呼んだり、好きな時にゴミを捨てたりしてはいけないということを、もっと浸透させていくべきだ。

 税金はきちんと納めるだけではなく、正しく公平に使うもの、そう考えて行動していくよう心掛けていきたい。