平成21年度受賞
『「二枚の写真」が見せてくれたもの』
鹿児島県 鹿児島市立鹿児島玉龍中学校 1年
木田 夕菜
ここに二枚の写真がある。それは市内の繁華街の同じ場所を写した二枚の写真である。一枚の写真には、歩道の道幅いっぱいに自転車が並べられ、道の真ん中にある点字ブロックもほとんど自転車の下に隠されている。もう一枚の写真は、歩道には一台の自転車もなく、そこを歩く人たちもゆとりをもって歩いている様子が写っている。
「最近、天文館が歩きやすくなったね。」
父の言葉に私ははっとした。五年ぐらい前のことだった。買い物に出かけた私は、道路に無秩序に並べられた自転車に足をとられて転び、大きな擦り傷をつくり、何も買わずに、あわてて家に帰ったことを思い出したのだ。
それがいつの間にか、歩道をうめつくしていた自転車が全くなくなっているのだ。不思議に思った私は父の助言もあり、市役所に問い合わせてみた。すると、市役所の方は二枚の写真を渡しながら、次のような話をしてくださったのだ。
数年前まで、市の中心地「天文館」では、自転車の放置に悩まされていた。歩道という歩道に自転車が並べられ、人々の通行の妨げになるばかりではなく、車いすや視覚障害者の方々にとっては危険を感じることも多かったという。そこで、町の景観を改善するためにも、自転車の駐輪禁止区域を定める一方で、公営の駐輪場を設置し、違法駐車を一掃するようにしたのだという。しかし、それは決して簡単ではなく、まずは違法駐車の自転車一台一台に、それを知らせる紙を貼り、注意を促すことから始めたのだという。そう言えば、今でも、黄色いキャップとジャンパーを着た方々が放置自転車を丁寧に調べていく様子を見かける。おかげで天文館は今では誰もが過ごしやすい環境へと劇的に変わってきている。
市役所の方に「こんなに変わるなんて、すごいですね。」と言うと、にっこり笑ってこう言われたのだ。
「これらの施策も市民の皆さんからいただいた税金のおかげで成り立っています。だからこそ、ちゃんと鹿児島市が良くなったと言われるようにしなくてはなりませんからね。」
税の働き、社会科ではこれまでも学習してきた言葉だが、正直、私にとってはあまり身近に感じられたとはなかった。しかし実は、日々の私達のくらしとこんなにも密接に関わっていたことに私は気付かされた。
私達が健康でそして安全で住みよいくらしをしていくためには、市民としての私達の意識や思い、行政の働き、そしてそれを支える税金のどれが描けてもダメなのだ。自分たちの町を良くしていくのは、誰かまかせではなく、一人一人がよりよい町づくりに興味を持ち、意識を高めていくことが必要なのだ。
目の前の二枚の写真が見せてくれたもの。それは、私達の手で作るよりよい未来の予想図なのかもしれない。